暖かい日差しが降り注ぐ。
その光に照らされてたくさんの美しい花々がそこに咲き乱れていた。
ふわりと風が吹くたび舞い散る桃色の花びら。
その花畑の中にたたずんでいたのは一人の青年だった。
少し茶色がかった髪に美しい顔つき。
星の欠片が入り込んだような綺麗な瞳はどこか遠くを見つめていた。
「また思い出してしまったな」
誰に言ったわけでもなく、青年はポツリと呟いた。
そして大きくのびをする。
辺りはまぶしい程明るいが誰一人としてそこにいなかった。
「つまらないなぁ…」
ゆっくりと青年が歩き出すと、目に止まったのは一輪の花。
まわりで美しく花弁を広げる桃色の花よりもひとまわり小さい。
爽やかな水色をした花だった。
「君も一人ぼっちなのかい?」
青年はその花の前にしゃがみ込み、尋ねるように話し掛けた。
しかし返事はない。
それでも青年は話を続けた。
「一人ぼっちって寂しいよね。俺もずっと一人ぼっちだったんだよ」
にこやかに話す青年に答えるかのように一輪の花はそよ風に吹かれ、少し揺れる。
「俺は生まれてこの方、あまり正直に思いをつたえるのは苦手なんだ。でも君になら話せそうだ」
その刹那、強い風が青年の間を通り過ぎ、花びらが舞った。
花びらが雨のように青年に降り注ぐ。
思わず息を飲むような美しい光景。
改めて青年は花に向き直った。



「俺の話を聞いてくれるかい?」