「そうよね、あと少しで夏休みじゃない。休みに入れば皆、あんたたちのことなんか、皆すっかり忘れてるって。運が良かったんじゃない?」
「うん、私もそう思ってる」
「じゃあ、あと少しのガマンだね、環」
「うん。ガンバる」
「ところでさぁ、環。夏休みに入ったら、どこか遊びに行かない?」
瀬戸君からいつの間にか話題は夏休みの話しに切り変わっていた。
香奈と二人で話していたら、
「あっ!」
小さく声を上げた私。
「どうしたの?環」
「ううん、なんでもないよ」
「あら、桜井君。相変わらず無愛想な顔してるわね」
後ろを振り返った香奈は苦笑いをした。
本当は桜井君と目が合ったんだ。不機嫌そうな表情はいつもと同じ。
私の方を見ながら桜井君は歩いて来る。
彼と目が合っただけなのに、魔法に掛けられたみたいに体が動かない。
席替えをして、桜井君の席は私が座るの列の最後尾。彼は私の横を通りすぎて席に着いた。
安堵のため息をついていると、
「そうそう、環。桜井君のことで面白い話を聞いたんだけどね……」
香奈は思い出したように話し出した。

