トンネルの下を歩いているとフワッと漂う桜の香り。
見上げれば、ピンク色の花の隙間から真っ青な空が見える。
なんて綺麗なんだろう。
あまりの美しさに思わずため息が溢れてしまう。
私はしばらくの間、桜井君に手を引かれ、鮮やかな色の桜を眺めながら歩いていた。
歩き続けて10分くらいかな?
行き交う人も少しずつ減ってきて、気づけば私と桜井君しかいない。
誰も通らないなんて、ちょっと怖い。桜井君はどこまで行くつもりなの?
不安な気持ちを持ち始めた私は……。
「ねぇ、桜井君」
彼の後姿に声を掛けてみる。
「……」
桜井君、私の声が聞こえていないのかな?
仕方ない。もう一回声を掛けるしかないか……。
「ねぇ、桜井君、桜井君ってば!」
さっきより声のボリュームを上げてみると
「……ん。なに?」
彼は立ち止まると振り向いてくれた。
やっと気づいてくれた!
「ねぇ、どこまで行くの?この辺り、もう誰もいないんだけど」
不安な面持ちで辺りをキョロキョロしながら聞いてみると……。