「あそこにいるの、樹里と賢司じゃん」
「えっ、樹里さん?」
桜井君の呟きに反応した私は思わず聞き返した。
「ほら、あそこ歩いてるの賢司と樹里だよ。アイツ等のところまで行くぞ、水野」
「あ、ちょっと待って!」
今日は私と桜井君の初めてのデートじゃなかったの?
瀬戸君の時はずっと2人きりでいたから色んな事を話したり、お店を覗いたり、それなりに楽しかった。
瀬戸君が私の事をどう思っているのか聞くこともできたし、私の事も話してお互いを知ることができて、距離が縮まったんだよね。
それなのに、桜井君ときたら私に構わず自由な行動ばかりしている気がする。
やっぱり桜井君は樹里さんのことが好きなのかなぁ?
樹里さんのことがいつも心配で堪らないのかも。
今だって樹里さんの姿を見つけただけで、すっ飛んで行っちゃったし。
桜井君、私が彼女だってこと忘れてるような気がする。
「俺は、お前の真っ直ぐで、一生懸命な姿に惹かれたんだ」
「あの日からずっと、俺は水野のことだけを見てきたんだ。例え邪魔が入ってきても俺にはお前しかいない。俺が好きなのは水野環だから」
去年のクリスマスイブの告白はなんだったんだろう?
桜井君が言ってくれた言葉を思い出す。
ねぇ、桜井君。私はあなたが言ってくれた言葉を信じても、いいのかな?
少しずつ溜まっていく不満。
私は、モヤモヤとした気持ちを抱えながら、彼の後をついて行くしかなかった。

