恋する5秒前~無愛想なキミと~


体育を見学するために一人昇降口で靴を履き替えていると


「もう熱は下がったのかよ?」


聞き慣れた低い声が聞こえてきた。


「あ、桜井君。この前は保健室まで連れてってくれて、あ、ありがとう」


お礼を言いながら、あの日の出来事を思い出して一人で顔を赤くした私。


「別に……お礼を言われるようなことはしてねーけど」


桜井君はいつもの無愛想な態度で応えるだけ。


そうだ、私、桜井君にお姫さま抱っこされたんだった。


「あの時は、その……重たかったでしょ?」


恐る恐る聞いてみると


「なにが?」


意味が通じなかったのか、聞き返す桜井君。


「私を保健室まで運んでくれたでしょ?重たかったから、申し訳なかったなって」


「ん、まあな。未来よりは重たかったな」


やっぱり、重たかったんだ!私、一人で保健室へ行けばよかったんだよ。


ショックのあまり肩を落としていると


「そんな落ち込むなって。お前を抱き上げたけど全然重くなかったし、俺の言うこと真に受けるんじゃねぇよ、バカ」


「いたっ!」


そう言って私のおでこをデコピンする桜井君。


彼はフッと笑みを溢すと先にグラウンドへと行ってしまった。