体育を見学するために一人昇降口で靴を履き替えていると
「もう熱は下がったのかよ?」
聞き慣れた低い声が聞こえてきた。
「あ、桜井君。この前は保健室まで連れてってくれて、あ、ありがとう」
お礼を言いながら、あの日の出来事を思い出して一人で顔を赤くした私。
「別に……お礼を言われるようなことはしてねーけど」
桜井君はいつもの無愛想な態度で応えるだけ。
そうだ、私、桜井君にお姫さま抱っこされたんだった。
「あの時は、その……重たかったでしょ?」
恐る恐る聞いてみると
「なにが?」
意味が通じなかったのか、聞き返す桜井君。
「私を保健室まで運んでくれたでしょ?重たかったから、申し訳なかったなって」
「ん、まあな。未来よりは重たかったな」
やっぱり、重たかったんだ!私、一人で保健室へ行けばよかったんだよ。
ショックのあまり肩を落としていると
「そんな落ち込むなって。お前を抱き上げたけど全然重くなかったし、俺の言うこと真に受けるんじゃねぇよ、バカ」
「いたっ!」
そう言って私のおでこをデコピンする桜井君。
彼はフッと笑みを溢すと先にグラウンドへと行ってしまった。

