恋する5秒前~無愛想なキミと~


「ごちそうさま」


「あらっ、環。ご飯残してるけど、もういいの?」


「うん、今日はもういいや」


「環、ちょっと来て」


お母さんに言われて側へ行くと、私の額にお母さんの手がそっと重なった。


「熱は……なさそうね。気分が悪くなったら帰ってくるのよ」


「うん、そうする」


朝御飯もろくに食べずに部屋に戻ると学校へ行く支度を始めた。


家を出て電車に乗り、何とか学校までたどり着いた。


や、やっと着いた!


今日は学校へ着くまで長く感じたなぁ。


教室へ入ると自分の席へ進んで行く。気が抜けたのか倒れるようにして椅子に座った。


そしてカバンを枕にして顔を伏せると、瞼が自然に閉じていった。


……野、水野。


おい、……か?


あれ?


この声は……桜井君の声?


私、今、夢を見ているのかな?


遠くから聞こえてくる声に耳を傾けていると、その声が段々と近づいてきて……。


「なぁ、水野。大丈夫かよ?」


耳元で大音響で聞こえてきた声に


「わあっ!びっくりしたっ!」


私は飛び起きてしまった。