「そうだな、悲しい人間だ」

声をかけられ、紅葉は振り向く。

片手は既に、腰の黄昏の柄にかかっている。

虚ろな心とはいえ、そこは剣客。

常在戦場の心構えは失っていない。

…男が立っていた。

凍りつく眼差し、黄金色の頭髪、透き通るような白い肌、男とは思えないような妖しい色気。

美丈夫という点では、紅葉と共通しているだろうか。

「だが止むを得ない事なのだ。選ばれた人間というのは、常に孤高を強いられる者だ。他者とは相容れないほどの天稟を持ち合わせているのだから…それが人間だとしても、人外だとしても」