誤解なきように言えば、シオン一味の誰1人として、紅葉を拒絶してはいない。

真太郎に敗北したからと見下したりはしていないし、寧ろこれを機に考え方を改め、歩み寄ってくれればとさえ思っている。

琴月流の担い手として、同じ剣客である龍馬や真太郎と良き好敵手となれるだろうし、夕城流次期宗主の参謀役として、真太郎や、やがては夕城に嫁ぐであろう紫陽花の支えになれるだろう。

しかし今の紅葉には、そんな考えは一切なかった。

そんな位置付けは、『敗者である自分が、勝者である真太郎の軍門に下る』という風にしか見えない。

勝者か、敗者か。

自身と他者との関係を、そういう風にしか見れない。

思えば紅葉は、悲しい人間であった。