崩れ落ちた紫陽花の華奢な体を抱き起こす真太郎。

「おい!しっかりしろ紫陽花!おい!おい!」

「…ちっ…余計な邪魔を…」

ヴラドは舌打ちしながら、愛銃二挺を懐にしまう。

「何が余計な邪魔だ!」

真太郎は激昂した。

「貴様生徒を…しかも無関係な紫陽花を撃ったのだぞ!早く何とかしないと…!」

「撃っていない」

狼狽する真太郎に対し、ヴラドは言った。

「この俺が、狙ってもいない相手に間抜けに被弾させたりするものか。俺の使う弾丸には、全て『狙ったものにだけ被弾する』呪いが施されている。例え無関係の者が割って入っても、絶対当たらないようにな。柾は弾丸が当たったと勘違いして、勝手に気絶しただけだ」

確かにその証拠に、紫陽花の体には銃創どころか、血痕すら残ってはいなかった。

「それにしても…くくっ…」

ヴラドはくぐもった笑い声を上げる。

「確か柾の事は破廉恥女などと罵っていた筈だが…紫陽花…ねぇ…ちゃんと名前を知っていたのだな…好意を抱かれて絆されたか?夕城の元跡取り」