「火、水、風、地、森、木、鋼、氷、雪、光、雷、花、川、雨、海の名を謳う、我が名は『シオン=グリフィノー』。名の契約に従い、血の盟約に応えよ、グラン・ロイエ」

…それが、どれほどの無茶な術式なのか。

シオンの父シンや、花龍の母リィが聞いたら叱り飛ばす事だろう。

『お前は死ぬ気か』と。

シオンはグランド・ランスロットに、彼の故郷ミルトゥワの全精霊の女王を宿らせようとしていた。

一柱でも自然災害級の力を誇る精霊の女王を、全て宿らせたグランド・ランスロット。

知識や技術が足りない分は、シオン独自の詠唱で補った。

限りなく不完全な、『全精霊の女王憑依』。

それは最早、時凍えがどれ程素早い動きかとか、臥龍の息子がどれ程強靱な肉体を持っているかとか、そんな事は些末な事で。