「…」
「…」
変わらない沈黙
「あ、そーいえば」
「なに?」
「テストってもうすぐ?」
「え?…あっ、定期考査っ、!」
「あ、立原さん忘れてたの?」
「は、そんなわ、けー」
「ふーん」
「…加瀬くんの得意科目って、なに?」
「数学」
「へぇ、…じゃあ、苦手なのは?」
「国語」
ちらっと横目で加瀬くんを盗み見てみれば、真っ直ぐに前を向いていて。
淡々と返答していく形の良い薄い唇は、夕方の色。
金色に光る黒髪を、面倒そうにかきあげて、ふあっと小さくあくびをこぼす加瀬くん。
そんな姿を、目に、焼きつけて。
「…ふーん」
私も、そっけない相槌を、ひとつ落とした。
