それから、なんとなく。
「あ」
「…あ」
ばたりと出会う昇降口で、お互い声を漏らして。
なんとなく、本当になんとなく肩を並べて歩いてみたり、そんな感じ。
「ん、今日は晴れてるね」
ここ数日でずいぶんと聞き慣れたように感じる加瀬くんの声。
なんで、こう、なんで、こうなったんだっけ?
6月。
梅雨を迎えたこの町に、ひさびさに訪れた晴天。
「…?おい、立原、さん?」
相変わらずつっかえながら、私の名前を不思議そうにつぶやく加瀬くん。
「っ、えっ?!や、なんでもない」
加瀬くんの立つ右側。
じわりと熱を持ち始める右肩にも、頬にも耳にも気づかれたくなくて。
ふいっと顔をそらす。
「……そ?」
興味なさげに落とされた加瀬くんの声音にほんの少し、傷つきながらも、
「…そ」
ひねくれ者の私は、言葉にできない。
