加瀬くんの黒髪がさらりと流れて、朝とは違う色を灯す。
染める夕焼け
加瀬くんの温もり
(…幸せだな)
それは、自然と、突然に。
私の心に浮かんだ。
えっ?!
そう思った直後に、私は思考がフリーズする。
え、いまいやいや、いま、うえっ?!
(…幸せ、ってそう思った…、)
しあ、わせ
ゆっくり反芻する。
しあわせ、…えっと
右隣を歩く、加瀬くん。
田舎臭いあぜ道
大きな、宝石みたいな夕陽
オレンジ色の黒髪
触れる指先
伸びた影
ひとつひとつを感じて、見つめて。
私は、楽しそうに口もとを緩めた加瀬くんの横顔を、ばれないようにそっと最後に見てから。
(…ふぅん、)
しあわせ、だな
そう、思った。
