ぱっと目を逸らして、おもむろに首の後ろに手をやってから、加瀬、は、言う。 「…ん、よろしくな、立原さん。」 『立原さん』 言われ慣れないくすぐったいその呼び名に、胸の奥が疼いたような気がして、少しだけ、慌てる。ぎゅっと手を握りしめて、ほんの少し考えてから、応える。 「こちらこそ、加瀬くん」 春色に笑う君の瞳は、とても澄んでいて。 あたたかいな、って、そんなことを思いながら。 私も、笑った。