あの日も雨の日だった。
今日よりは穏やかで、だけど穏やか過ぎない。
───まるで甘すぎず苦すぎないビターチョコのような。
そんな雨の日だった。
最初こそ気まずかったが今まで通りにと約束した以上、笑って話しかけた。
プライベートで話すことはあまりなかったから他愛ない話をした。
話してみると少し思っていた先輩と違ったのと同時に、話しやすい人だと感じたことは覚えている。
気が合って今までより距離が縮んだ。
それからというもの約束もしていないというのに雨の日は必ずこのカフェに私たちは訪れるのだ。
私が質問して彼が答えて、たまに彼が質問して。
この単純なやり取りはもう何回も繰り返されていた。
こんなことをしながら私の気持ちが吹っ切れたかというと、そうでもない。
恋情が友情に変わった訳ではなかった。
私がまだ彼を異性として好きなのは私は勿論、彼も知っている。
しかし、それとは別に友としての絆が出来たと感じるのも本当である。