不意に発せられた言葉に彼は虚をつかれる。

目を丸くしているその姿からは
いつもの余裕ありげな姿は浮かばなくて。


「なら、約束しましょう?雨の日はこのカフェで。」


私は小指を突き出す。

一瞬躊躇った後、彼の骨ばった大きな指がからめられた。


「指切りげんまん。………約束ですよ?」


あの雨の日だけの。

不思議な時間を、また。


「あ、山野さん。明日は来ますか?」


前屈みになっていた体を起こし、
背凭れに凭れつつカップを口に運んだ。