そういえば昨日、道場で使った記憶はあるが鞄に入れた記憶はない。
「ありがとう、励。」
ハンドクリームを仕舞うと、何やら強い視線を感じてそちらを見た。
「山野さん?」
その視線は彼のそれで。
先程より難しい顔をしていると思うのは気のせいだろうか。
彼は何を考えてもいるのだろう。
そんな考えたってどうしようもないことを考えてしまう。
「……もう着くよ。」
それだけ言い残し先々と彼は行ってしまった。
何かあったのだろうか。
いや、あったのだろうけど。
私がいくら考えてもその答えは彼の中にしかないのだから。
「そういや冬音、聞いた?」