彼はふいっと顔を逸らして歩く。

置いていかれそうになり、慌てて隣に並んだ。


「今日は不機嫌な日です?」


「………………ちょっとだけ。」


クス、と笑ってしまう。

不機嫌でも正直で優しい人だ。


「山野さん、冬音。おはようございます。」


後ろから声がして振り返ると励がいた。

そのまま挨拶を返す。


「あー冬音、これ。」


励は私に何かを手渡した。

それはハンドクリーム。


「もしかしなくとも昨日忘れてってた?」