更に顔を近づけてみると、子猫は前足で俺の鼻先をチョンチョンと触ってきた。 「ぷはっ。くすぐった」 また笑いが漏れてしまった。 こんなところを友達とかに見られたら、絶対に気持ち悪がられる……と思っても、子猫が可愛くてなかなか手が離せない。 こんなに可愛いのに捨て猫か。 湯川の悲しげな顔が、また頭に浮かぶ。 「さっきの湯川みたいな、思いやりのある飼い主だったら、お前も幸せだっただろうにな」 ふいに思ったセリフが、自然と口から漏れた。