……姿が見えなくなった。もう行っても大丈夫そうだな。
段ボールの前に立ち、折り畳み傘を少しずらして子猫を見下ろす。
(早く、優しくていい人に拾ってもらえるといいのに……)
「なぁ……ショコラ」
名前に反応するように、子猫は「ミャア」と一鳴きした。
「俺が『優しくていい人』になれたら……なってもいいか?」
と訊くと、また「ミャア」と鳴いた。
それを『いいよ』って言ってくれたと勝手に解釈し、すぐさまその場でスクールバックからスマホを取り出した。
スマホを濡らさないように、傘を首と肩に挟みながら指で操作して電話をかける。


