狼の子(仮)




しかし、狼羽の中にはまた新たな疑問が生まれた。
狐蛟が頻繁に口にしていた言葉の意味はちゃんと理解してすっきりしたことにかわりはなかった。だが、それを理解してしまったが故に狼羽には、どうしてもわからないことが出来てしまったのだ。








『なぜその中心にいるのが、狙われているのが狐蛟なのか。』








どれだけ考えても、狼羽には[狐蛟がモテるから]という答えを見つけることが出来なかった。理解出来ないのは嫌だ。でも、だからといってここにいるのは…女豹のような彼女たちを見てるのは、なんというか、正直悲しい。

女子学生は可愛いと聞いていたし、それを信じて疑わなかったから。


でも実際は違った。確かに容姿は可愛い子ばかりなのだが、女豹に可愛いは似合わないだろう。普通に怖かった。…お母さん程じゃないけど。

狼羽は決意する。


ここから移動しよう!


逃げるってことじゃないから。あくまで移動するだけだから。
誰に向けるわけでもなく心の中で言い訳をしながら狼羽は狐蛟に声をかけた。





「あ、オサキ!私、先に行ってるから!」



狼羽の凛とした軽い声が響く。