狼の子(仮)




十年後……。




種植村の中心部に大きくそびえ建つ中高一貫校「種植学園」。


ここに今年も新たに入学してくる生徒たち。

中学生、八十四名。
高校生、百二十名。

新入生も在校生も皆心躍らせる中、例外なくここにも一人、心躍らせ興奮を隠せない者がいた。



「これが学校なんだな!オサキ!凄いな、大きい!人いっぱい!」



「落ち着け、ろう。学校なんだから当たり前だ。
ほら、入学式が始まる。早く行くぞ。」










「ろう」と呼ばれた少女、狼羽(おうは)は隣を歩いていた鮮やかな山吹色の髪の少年の後を駆けていった。