ここは種植村で一番大きく、危険と言われている夜鬼汝(よきな)山の奥。
日が当たるところは少なく朝も夜も関係なく暗い場所。
その名の通りこの山には村のモノノケが集中して集まってくる。
日の差す方には妖精が、暗い方には妖怪や鬼と呼ばれる者たちが。
動物もモノノケも多く誰も知らないこの山奥に異様な家族が過ごしていた。
「お、かあさん。きょう、とる、した。うさぎ」
うさぎを口に加えて獣走りでやってきた少女は、一匹の狼の前で止まり、二足立ちしてうさぎを手に持ち直した。
見たところ5歳前後くらいの女の子。
美しい銀色の髪は伸びきってボサボサで、服は身につけていない。
少女から「おかあさん」と呼ばれた狼は少女とじっと目を合わせる。しばらくすると少女はにっこり笑い、狼の前に獲ってきたうさぎをおいた。
そしてそのまま先ほど走ってきた獣道を、また獣走りで戻って行った。
