あ、あ、あ愛してる

バンド用に書いた曲をヴァイオリンで弾くには難がある。

女性はそれを承知でリクエストしているに違いなかった。

無茶ぶりを仕掛けた女性のシタリ顔が苛多々しい。

俺はセッティングされた席から、インタビュー席の前に移動し、スッとヴァイオリンを構える。

原曲を崩さずに即興のアレンジで「カナリア」を奏でる。

「綿貫和音を舐めるなよ」と言ってやりたかった。

俺がヴァイオリンを弾き始めるまで、心配顔で俺を見つめていた拓斗たちの顔に安堵感が浮かんでいる。

拓斗と奏汰がヴァイオリン演奏に合わせられれば最高なのにと思いながら、最後まで弾き通した。

「よ――ろしいでですか。もももう少し……ヴヴァヴァイオリンのて、て手入れをし――てあ、ああげてくください」」

女性にヴァイオリンを返す。

言いながら、膝がガクガク震えていた。