うるうるした目で訴える。

綿貫和音似の男子は女の子を抱き上げ肩車をし、シャツの胸に挟んでいたサングラスをサッと掛けた。


「ねえ、あなた喋れないの?」

男子は何か言いたそうに困った顔をし、ふるふると首を振る。


「不便ね……嫌なこと聞いてごめんなさい」

男子はあたしが言い終わらないうちに、にっこり優しい笑顔を向けた。


「さやちゃんのママーっ、いませんか。さやちゃんのママーっ、いたら返事してください」

あたしは声を張り上げながら、総合案内所に向かって歩く。


「ママーっ。さやちゃん……ヒック……さやちゃんの……ヒック……ママーっ」

園内を歩くカップルや若い女性、女の子たちが、こちらを振り返り、男子をマジマシ見つめる。


「あの人――!?」


「和音?」


「綿貫和音!?」

ヒソヒソと話し声が聞こえる。