あ、あ、あ愛してる

和音くんはヴァイオリンケースと貴重品の入ったバックくらいしか、持っていない。

搭乗案内のアナウンスが流れ始めた時、仁科副部長がいきなりあたしの手首を掴み、走り出した。

「有栖川、小日向を連れてきた」と思い切り声を張り上げ叫びながら。

和音くんはあたしたちの姿を見つけると、驚いたように、こちらを見て駆け出した。

「かかか花音!!」

掠れた声を絞り出し、辺りを気にせず何度もあたしの名を呼んだ。

あたしは和音くんの声を聞いた途端、仁科副部長の手を振りほどき走っていた。

「Alice」と思い切り和音くんを呼んでいた。

涙が溢れて頬を伝った。

和音くんは飛び込んだあたしを両手でしっかり抱き寄せた。

「か花音……いい行ってくる。かーならず、うう歌ーえるようにななってかか帰ってくる」

和音くんは聞き取りにくい掠れた潰れた声で言い、あたしをギュッと抱きしめた。

あたしは和音くんの言葉に深く頷いた。

「かかか花音に……いい――1番伝えたかったここ言葉……かか花音……あ、あ、あ愛してる」

和音くんの囁く声がはっきりと聞こえた。