「細くて華奢で制服はダボダボで、たびたび倒れて保健室に行ったり、早退したりする、大人しくて反抗しないあいつはいいエサだったのかも。喋ろうとする必死な様子が可笑しくて、無理矢理喋らせて、パニック発作を起こすのを面白がっていた」

「ひどい」

「けど、イジメは1年の時だけだった。あいつをイジメていた連中が、毎回首席で頑張る姿にいつのまにかイジメを止めていた。今では万年首席の優等生で、実技もずば抜けているあいつを誰もが認めている。まさかLIBERTEのボーカル綿貫和音だとは思わなかったけど」

「先輩、全国大会に行きたいです。和音くんに『関東大会突破したよ』って言いたいです」

「明日から猛練習ね」

仁科副部長があたしの肩を引き寄せ、耳元で囁いた。