そこにはいつも君がいた



菜実さんが僕の為に、布団を敷いてくれた。

ニヤニヤしながら「ふふっ、おやすみ~。」と言い残し、リビングを出て行ったものだから、不思議に思って布団が敷いてあるところに行って見た。着いたら、菜実さんの変な態度の理由がすぐに分かった。

僕の布団は、愛子の部屋に敷いてあった。布団と愛子のベッドが平行に並べてある状態だ。

愛子がそれを見たら、「お母さん・・・やっぱり勘違いしてる。」と愚痴を漏らしていたけど、彼女はそのまま自分のベッドに滑り込み、寝る体勢に入った。

だから僕も、隣の布団に身を入れた。




「ねぇ、愛子。」僕は小声で言った。

「何?」彼女は僕の方に体を向け、僕を見た。

「話そうよ。」

「・・・分かった。でも眠くなったら私寝るからね。」

「うん。なんか、お泊りって感じだね。」僕は笑顔で言った。



暗い部屋で、僕たちのヒソヒソとした小声が微かに響いた。



「俺の髪、なんだか愛子の匂いがする。」

「そりゃあ、そうだよ。同じシャンプー使ったんだし。」

「うん、でもなんか不思議じゃない?自分から人の匂いがするって。」

返事を待ったが、返ってこなかった。

「愛子?」僕は起き上がって愛子を見た。


窓からの薄い月光に照らされていた愛子は、小さな寝息を立てて眠っていた。口が微かに開いていて、右手がベッドからはみ出していた。愛子の無防備に眠る姿は、少し照り輝いているように見えた。


僕は微笑んで、「おやすみ、愛子。」と小さな声で言い、ベッドからはみ出した愛子の手を自分ので包んで布団の中に戻った。



『心から互いを憎む親子なんていないと思う。絶対いない。』


僕は菜実さんが言っていたこの言葉の意味を考えながら、深い眠りについた。