リビングのドア越しからお風呂場の扉が開く音が聞こえた。
僕は菜実さんに言った。「菜実さん、この話は愛子には秘密でお願いします。」
菜実さんは僕を見た。そして、「分かったわ。愛子には何も言わない。」と、彼女は微笑みを浮かべて答えた。
五分後に愛子がリビングに入ってきた。彼女の髪は濡れていて、それを見た僕の心臓は少し跳ねた。
「あ、ごめん!私のこと待ってた?」
菜実さんが言った。「愛子遅いよ。さ、早く食べよ!」
食事はどれもとても美味しかった。ずっとコンビニ弁当やパンばかりだったからか、今まで食べたものの中で一番美味しく感じた。
「ごちそうさまでした!」
久しぶりにこんな満腹になるまで食べた。温かい家に美味しい料理。まるで天国だ。
「帰りたくないな・・・。」ボソッと口にした。
愛子と菜実さんに、これが聞こえてしまったみたいだ。
愛子が僕に言った。「白斗、泊まってく?」
一時間前の僕なら、菜実さんが食事に誘ってくれた時みたいに断っていただろう。でも、三人で一緒に食事を食べて、何だかとても親しくなってしまった。それに、僕はこの家の中に今までにない大きな心地良さを感じた。
僕は顔を上げて、「いいの!?」と愛子に聞いた。
「うん。」愛子は菜実さんの方を見て、「お母さん、いいよね?」と聞いた。
食器を台所に運んでいた菜実さんは、「もちろん、良いに決まってるじゃない。」と優しく言ってくれた。
僕は大きな笑顔で、「やった!ありがとうございます。」と言った。
一日くらい、俺ここにいて良いよね。何日もはダメだけど、せめてもうちょっと、この温かい家の中に居たい。
僕はそう思った。
「じゃあお礼として、俺食器洗います!」僕は立ち上がった。
菜実さんは微笑んで、「あら、じゃあお願いしちゃおうかな。」と言った。
「私もやる!」愛子が僕の隣にきて、洗い済みの食器を拭き始めた。
この夜、僕らは笑顔で溢れていた。

