「汚いけど、適当に座って。」
「うん、ありがとう。」
愛子は僕をリビングへと案内してくれた。愛子の家のリビングはごく普通で、テーブルに開かれた新聞や、飲みかけのコップなどが心地良い生活感を出す。
僕はソファの端の方に座った。僕の体重で、ソファが微かに沈む。
「白斗、さっきなんで『愛子』って言ったの?」愛子が僕の隣に座った。「付き合ってるみたいじゃん。」
僕は彼女を見た。「俺もさっきちょっと思ったけどさ、それ。でもいきなり『村上』って呼べって言われても。」
「うっ、確かに。私もいきなり『宮崎』って呼べる自信ないわ。」
僕は笑った。「だよね。だからいいんじゃない?」
「うん・・・。お母さん、付き合ってるって誤解して調子に乗らないといいんだけど。」
「まあまあ、それでもいいじゃん。完全に間違っているわけでもないし。」
「・・・良くないよ。」彼女は顔を赤くして僕を不機嫌そうに見た。
そのとき、リビングに愛子のお母さんが入ってきた。
「あともうちょっとで沸くから、待っててね。」そして彼女はキッチンに入り、料理を始めた。
「私、部屋に鞄置いてくる。」愛子は学校の鞄を持って立ち上がり、二階への階段へ向かった。「白斗に変なこと言わないでよ!」
「大丈夫だって。」愛子のお母さんはニコニコしながら言った。
愛子はため息をつきながら、階段を上った。

