そこにはいつも君がいた



放課後は鐘がなる直後にバイト先へと直行だ。僕は学校をダッシュで出て(制服を着ていれば多少は校内を歩き回っても大丈夫なことに気づいた)、今バイトをしているカフェ『キャッツ』へと向かう。今は夏休みだから午前中にもバイトを入れられるようになったけど。

このカフェでのバイトは、僕が家出してから四つ目のバイトだ。前のバイトでは、中学の友達にバッタリあってしまったり、親の会社のお得意様が常連だったりと、危ないと感じたらその週にはバイトを辞めるようにしている。不思議なことに、いままでの僕のバイトはすべてサービス業だ。本当はもっと控えめなバイトをしたほうがいいことは分かっているが、これも無意識のうちで、気づいたらいつもそうなっている。僕は、もしかしたら人生無意識にやっていることの方が多いのかもしれない。

店員は裏口から入るのが原則だ。僕は店を回って、バイトの控え室へとつながる扉を開けた。

「おー白斗くん、おはよう。相変わらず早いね。」この店の店長だ。彼は五年前にこの店を立ち上げたらしく、町でも評判のいい店にまでとなった。普段は落ち着いているけど、猫の話になるとまるで別人だ。彼曰く、『猫アレルギーで猫に触れられないことからパッションが溢れ出てしまう』らしい。

僕は笑顔で答えた。「おはようございます、店長!」



この日のバイトは二時ごろに終わった。さて、学校に帰るか、と考えて店を出ると、ある女の人が道を歩いてくるのが見えた。その人を見た瞬間、僕はとっさに店の裏に隠れた。

赤いワンピースを纏うその人は深く帽子をかぶっていて顔が見辛かったけど、僕は瞬時にそれが誰なのかが分かった。



その女性は、僕の母だった。