空に一筋の光が上がり、鮮やかな黄色と緑色の大きな花火が姿を見せた。その直後に鳴った爆発音は私の心臓へ真っ直ぐと突き刺さるようだった。
「始まったね、花火。」私がそう言うと、視界の隅で彼が頷くのが見えた。
次々と夜空を照らす光を私は夢中になって眺めた。屋上からの景色は、想像以上に素晴らしいものだった。大勢の人が集まる花火大会の会場では味わえない静けさと開放感が気持ち良かった。
私は白斗の方を見た。彼も同じ気持ちで花火を見ているのかが気になったからだ。だけど、彼は花火を見てすらいなかった。
彼は私を見ていた。
「・・・なに?」それまでずっと彼は私のことを見ていたかと思うと、鼓動が急激に加速して、声の平然を保つのが精一杯だった。
彼は何も言わなかった。ただ、私を真剣な目で見つめた。そして、私もそれを見つめ返した。
花火は次々と上がっていく。こうやってお互いを見つめあってるのなら、今しか見れない花火を見るほうが利口なのだろうけれど、不思議なことに、私は白斗から目を離せなかった。まるで、彼の真っ直ぐな眼差しに吸い込まれて行くようだった。
実際は多分、一分にも満たない短い時間なのだろう。しかし、私にとってはこれが永遠のような、一生終わらない時間に感じた。
彼は目線を合わせたままゆっくりと私の顔を両手で包み込み、私の顔を引き寄せた。私の心臓はますます活発に動き始めた。
彼は私の額を彼の口に近づけた。
そして、雪のように軽く、唇を私の肌に押し付けた。彼の唇は生温かくて、とても柔らかかった。
白斗は手を離して、何もなかったかのように元の姿勢に戻り、花火を見始めた。
「・・・キス以上はしない約束じゃないの?」私は小さな声で聞いた。
彼は私を見て、微笑んだ。花火の光で照らされた彼の頬は微かにピンク色をしていた。
「ごめん、我慢できなかったんだ。でも、口じゃないからセーフだよね?」
彼は笑顔でそう言った。

