そこにはいつも君がいた



私は、あかねの家に遊びに行ってきた帰りに、寄り道して近くの『キャッツ』というカフェに行った。ちなみに、それは猫カフェや猫喫茶ではない。この店の店長さんが猫アレルギーなのにも関わらず、猫が大好きだから『キャッツ』という名前らしい。

自動ドアを通ったら、涼しい風が私を打った。


「いらっしゃいませ〜。」

私は店の吊るされてるメニューを見ながらレジへ向かった。

「・・・チョコマフィンひとつ、お願いします。」

私はレジの人を見て、目が飛び出しそうになった。


「白斗!?」

思わず大きな声を上げてしまった。店にいた何人かの客が私を見た。

それまでレジのボタンを打っていた店員が顔を上げた。

「あ、愛子。」彼はびっくりした素振りは見せないで、いつもみたいに屋上に私が来たかのように答えた。

私は小さな声で言った。「『あ、愛子。』じゃないでしょ!こんなところで何してんの!」

「何って、バイトだけど。」彼は私に自慢げな顔でカフェのエプロンを見せた。黒の背景に白い猫がニヤリと笑っている。「かわいいでしょ?」


「そうじゃなくて、こんなところでバイトしてて大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。知ってる人が来たり、ばれそうになったらすぐにバイト変えるって言ったじゃん。」

そう言えばそうだった。私はため息をついた。私は心配しすぎなのだろうか。いや、自分から家出したくせにこんなにヘラヘラしている白斗が悪い。


「じゃ、お会計一二七円です。」

私はお金を出して、白斗からチョコマフィンを受け取った。


私がレジを離れる前に彼は言った。

「それ、すっごい美味しいよ。」

彼の言う通り、チョコマフィンは今までで食べた中で一番だった。