夏休み突入早々、私は白斗がバイトのない日に合わせて学校の屋上にきていた。
「ってことで、今年は花火大会一人で行くかもしれないんだ。」
「でも、『好きな子と行けば』って言われたんでしょ?」彼はニヤニヤしながら聞いた。
白斗が、その『好きな子』が自分だと知りながら聞いてるのは明らかだ。
「でも、その人行けないみたいだから、誰か他の友達誘おっかな〜。」私は何気なく言った。
彼の笑顔が消えた。「え!俺行けないなんて言ってないじゃん。」
「何言ってんの、ここの学校だって家からそんなに遠くないって白斗言ってたし、知ってる人に会ったらどうすんの。あそこ結構混むんだよ。見つかりたくないんでしょ?」
「えー・・・。」
彼は不満そうな顔をした。
それはこっちのセリフだ。私だって白斗と一緒に行きたい気持ちはいっぱいだ。
「あ!じゃあさ、こっから見るってことは?」彼が提案した。
「ここって、屋上からってこと?」
「うん、そう!」彼は目を輝かして言った。「ここからだったら、多分花火も見えるし!」
確かに。何でもっと早く思いつかなかったのだろう。
「いいね、そうしよ。」
白斗は念のため、その日にバイトを入れてないかを確認して、運良く空いていた。
今年の花火大会は、いつもよりも待ち遠しく感じた。

