そこにはいつも君がいた



私は屋上に数学の問題集を持ち込んで、鼻歌を奏でる白斗の隣で勉強をしていた。

彼の鼻歌は、相変わらず綺麗で、聞いてると心が落ち着く。


「ねえ、愛子。さぼって勉強するよりも授業出て勉強する方が効率いいと思うんだけど。」

彼は私に言った。

「それはできないよ。白斗に会えないじゃん。」

私は問題を解きながら言った。

「でもさ、さぼりすぎて成績下がったらどうするの?もう結構の授業数受けてないわけだし。」

「大丈夫だって。成績の95%ぐらいはテストなわけだし。点数稼げばなんとかなるよ。」


「・・・じゃあテスト、うまく行きそう?」


私の手が止まった。

実は、頑張る決心はしたものの、あかねも自分のテスト勉強があるわけだし、そう簡単に学力は伸びていなかった。


「・・・頑張る。」

彼は笑った。「俺、手伝おっか?」

私は彼を疑わしく見た。「できるの?中学卒業以来学校行ってないんでしょ?」

「大丈夫だよ。俺一応、この学校特待生で受かったし。」

「そうなの!?」

「うん、だから少しはできると思う。」彼は今、私が解けなくて詰まっていた問題を見て、ブツブツ独り言を言い始めた。



私が彼の秘密を知ってから、彼はもっと自分のことを教えてくれるようになった。


好きな人のことを知ることが、こんなにも喜ばしい気持ちを生むことを知ったのはつい最近だ。


前は、白斗の苗字すら知らなかったし、聞こうとも思わなかった。


だけど、彼の家出のことを知ってから、彼のことをもっと知りたい、理解したい。


そういう欲望を度々感じるようになっていた。