「そういえば、夜中に科学室にいたのも、白斗?」
私たちは、蒸し暑い屋上の中央に座って、話していた。
彼は私を見て言った。「うん、そうだよ。ばれてたんだね。」
「やっぱり!あの声、絶対白斗だと思った!」
「てか、俺も結構びっくりしたんだけど。あの時、なんであんな時間に学校にいたの?」
「夜中に科学室で水を流してる幽霊がいるって噂があって、友達に無理矢理連れられたんだ。」
彼は一瞬、目を大きくして黙った。そして、大きい声で笑った。
「あはははっ!だからこの前、俺が幽霊かって聞いたんだね。」
「だって、いつ屋上に行ってもいる人の声が、幽霊がいるって噂されている部屋で、しかも夜中に聞こえたら、そう思うのも無理無いでしょ?」私は治らない彼の笑いに呆れて言った。
彼は笑い涙を目元から拭き取りながら、「まあ、そうだね。」と言った。
「で、あそこで何してたの?」
「洗濯だよ。夜しかあそこの水道は使えないから、総下校の後に洗って、乾くまで物置きで干すんだ。」
「へぇ、そうなんだ。」
「それとたまにお金がきつい時は、そこで体洗ったりも・・・。」彼は小声で言った。
私は彼を信じられないように見た。「嘘でしょ!?やめてよ、さすがに引くよ。」
「愛子ひどい!でもその時は本当にお金がピンチで・・・!」
「そんなことやるぐらいなら、うちのお風呂貸すよ。」
彼は目を輝かせて、私を見た。「本当に!?」
「うん、別にいいよ。むしろ、うちで住めばいいのに。」実は、前からこれを思っていた。もし彼がそれで楽になれるのなら、それぐらいはする覚悟はあった。
彼の顔から笑顔が消えた。「・・・ううん、それはだめだよ。嬉しいけど、自分で家出したんだから、自分で責任取んなきゃ。」
「・・・そっか。」彼の答えにはあまりびっくりしなかった。彼ならそう答えるだろうと思っていた。彼はそういう人だから。
「ごめんね。でも、ありがとう。」彼は私の手を自分のと絡まさせ、力強く握った。
私たちは、少し照れながら、鐘がなるまでの時間を雲を見ながら過ごした。

