そこにはいつも君がいた



彼は続けた。


「その頃には高校受験もとっくに終わっていて、新しい制服ももうすでに家に届いていた。


俺は、家を出ることにしたんだ。そしたらお父さんとお母さんも、俺も楽になれると思ったから。


だから、新しい高校の制服と自分のほとんどの所持物を持って、夜中に抜け出したんだ。」





「別に行く当てもなかったから、とりあえずこの、入学するはずだった高校に来てみたんだ。そしたら、警備が異常に軽くてさ。裏門とかすぐに開いちゃったよ。」

彼は笑ったが、私は少しも笑えなかった。彼は私の想像出来ないことを体験していたことに気づいた。彼がなんで時々あんな険しい顔をしていたのかが分かった気がした。でも、彼は私の前ではできるだけ笑顔を保つようにしていた。彼は今まで、無理をしていたのかもしれない。


「校内を徹底的に回った結果、ここの屋上がどの教室からも見えないことに気づいてさ。奥の校舎だから、あまり人もこなさそうだし。とりあえずここの屋上にいることにしたんだ。そして、荷物はこの、隣の物置きにしまっておくことにしたんだ。


何日経っても、お父さんとお母さんが俺を探してる気配は少しもなかった。だけど、それは想定内だった。捜索願いを出したりしたら、二人の会社の評判はどうなるかわからないからね。

入学式のクラス発表の時も、制服を着て新入生に紛れ込んで、クラス表を見てみたけど、あるはずの俺の名前はどこにもなかった。

予想だけど、多分二人はお金で、学校に宮崎白斗が入学するはずだったことを秘密にして、万が一俺が帰ってきたら転校生として俺を学校に入れるように頼んだんだと思う。二人がしそうなことだよ。


だから、同級生になるはずだった一年のみんなは俺の存在すら知らない。俺はただ、ひっそりとこの屋上で、何ヶ月も暮らしてきた。」