そこにはいつも君がいた



「俺の両親は起業家で、俺が言うのもなんだけど、結構うまくいってるんだ。」


薄暗い物置きの中で、彼は話し始めた。


「でも俺は小さい頃から、その会社を継ぐのにふさわしい息子になるために厳しく育てられてたんだ。

昔はまだよかったんだ。俺が何かを正しくやると、お父さんとお母さんは俺を褒めてくれた。それが嬉しくて、俺は二人を喜ばせるために頑張ってた。

だけど、俺が五歳の時に、弟が生まれたんだ。青太って名前なんだけど、小さい頃から頭が良い子で、いつしか僕のはるかに先に越していた。周りの人たちも、長男の僕じゃなくて青太が会社を継ぐだろうと言っていた。

お父さんとお母さんも青太のことをもっと構うようになって、気づいたら俺はほったからしにされていた。青太はすごく才能があって、どんなに頑張っても俺には追いつくことができなかった。青太のことばっかり見るお父さんとお母さんにイラついて、少し反抗もしたんだ。

俺、自分のこと『俺』って言ってるでしょ?小さい頃は『僕』って言うように教育されたんだけど、無理やり『俺』に直したんだ。

今考えると、多分お母さんとお父さんを怒らせて、俺の方を見させたかったんだ。バカバカしいね、弟に嫉妬だなんて。
でも二人は、僕の方を見向きもしなかった。気づいてもなかったと思う。二人はただ、青太を会社の継げるような大人に育てるのに必死で、僕のことなんか目にも入っていなかった。



中学でも、勉強とか必死にやったんだけど、やっぱり青太にはかなわなかった。

聞いちゃったんだ、俺。夜中に一階に行ってみたら、お母さんとお父さんがリビングで話してて、『白斗はいらない』とか『青太さえいれば会社は大丈夫』とか言ってたんだ。

それまでは、青太にはかなわないとしても、せめてお母さんとお父さん、それと会社の役に立てる、って思ってたから、二人の会話を聞いてすごくショックだった。


二人は会社のことしか頭になかった。会社を継がない息子のことなんか、お父さんとお母さんにとってはどうでもよかった。


俺は、二人の重荷。足止め。負担。そして、邪魔者。




『この家庭にいない方が、二人にとって、そして僕にとってもずっと楽だ。』



いつしか、そう思うようになっていた。」