「やあ。」彼は言った。「さぼり?」
余計なお世話だ。
そう思って、ムッとした顔で私は答えた。
「そうだけど。あなたもでしょ?」
彼は微笑んで、「まあね。」と言った。
予想どうりの答え。だけど、彼の微笑みと口調に私は違和感を感じた。何か、私には理解できない深い意味が隠れている、そんな気がした。
二人とも暇だったから、とりあえず話すことにした。二人で並んで、屋上の床に座った。
「俺はハクト。」
まずは自己紹介。
「ハクト?珍しいね。どういう漢字?」
「白、に北斗星の斗、で白斗」彼は言った。
「へぇー。私は愛子。愛に子で愛子。」
普通はこういう場合、苗字も言うんだろうけど、あっちが言わなかったから、その流れで私も名前しか言わなかった。
彼は目を細めて微笑んだ。「愛子。綺麗な名前だね。」
すごく気に入ったのか、白斗はなんども私の名前を嬉しそうに小声で繰り返した。
『白斗』なんて珍しい名前を持ってる人が『愛子』なんて平凡な名前が綺麗だなんて、彼は少し変わってる。

