そこにはいつも君がいた



私が口を開いたのは、ずいぶん経った後だった。


「・・・私、高校に入ってから、お母さんとの喧嘩がすごく多いんだ。」

私は、彼にお母さんのことを話してなかった。呆れられると思って、口を塞いでたのだ。


白斗は黙って、私の話を聞いてくれた。


「お母さんは私を若く妊娠して、お父さんが黙ってアメリカに行って置いていかれた後も、女手一つで私を頑張って育ててきてくれた。昔は、お母さんが好きで好きでたまらなかったのに、最近は傷つけることしかできない。」

私の目に、涙が溜まってきた。

「なんでだろう。ほんのちっぽけなことでお母さんを憎んじゃう。憎みたいわけじゃないのに、つい体が勝手に動いて、お母さんに当たっちゃう。」

白斗に流れ出した涙が見えないよう、私は下を向いた。

「・・・もう、昔みたいにはなれないのかな・・・。」



しばらくして、白斗が言った。

「・・・それは違うと思う。」

「・・・え?」

私は顔を上げ、白斗を見た。


白斗は両手で優しく私の顔を包み、親指で私の涙を拭き取ってくれた。私の頬に感じられる温もりが、切ないほど温かくて、ますます涙が止まらない。

彼は、私をまっすぐ見て言った。

「お母さんが好きだったことが変わったんじゃない。むしろそれが大きくなって、お互い大好きだからこそ強く当たっちゃうんだと思う。そして、愛子もそれはわかってると思う。」

温かい涙がどんどん溢れ出す。おそらく、私は今、ひどい顔をしているだろう。


私はゆっくりと頷いた。

お母さんが嫌いな訳じゃない。好きなのに、素直になれなかっただけだ。

「・・・私、お母さんにひどいこと言っちゃった。『だからお父さんに置いてかれたんだよ』、って・・・。」

白斗はうなずいて、うん、と言った。


「すごい傷つけちゃった・・・

・・・お母さん、許してくれるかな・・・?」


彼は、私を抱きしめて、

「うん。素直に言えば、きっと許してくれるよ。」

と、優しく言ってくれた。




私はその後、彼の腕の中で、子供みたいに大声を上げて泣いた。




多分、一生分の涙を流しただろう。