そこにはいつも君がいた



教室に入ると、やたらと騒がしいことに気付いた。

私は女子が群がっているところへ行った。


「なに?どうしたの?」

少し仲の良い美優が私を見た。「あ、愛子。今ね、学校の幽霊の話をしてたんだ。」

「幽霊?」

「え!知らないの?結構うわさになってるのに。」美優は驚いて言った。

私はかぶりを振った。「知らない。どんなうわさ?」


女子の輪の中心で話をしてた夏実が私の方を見た。「教えてあげる。あのね、ある夕方、下校時間を寝過ごした女子生徒が急いで廊下を走ってると、科学室から水か流れる音がしたの。その人は気になって、ゆっくり入ってみると・・・。」

みんな、ゴクリと唾を飲んだ。

「そこには、誰もいなかった。ただ、暗闇の中で水道から流れる水の音だけがあった。女子生徒は不思議に思い、その蛇口を止めて、廊下を進んだ。」

こういう話は苦手だ。私は鳥肌が立ってきた。

「だけど、すぐに、また科学室から水の流れる音がした。女子生徒は再び、科学室の中を覗いた。そしたら、さっき閉めたはずの蛇口が、また開いていた。だけど、そこには誰も見当たらない。女子生徒は気味が悪くなり、急いで家へ帰った。それ以来、あの水道の音が頭から抜けないんだってさ。」

夏実の横で彼女の話を聞いていた恵子が言った。「他にも放課後に起きる心霊現象の証言、いっぱいあるよ。」

美優が言った。「でさ、みんなで夜の学校に忍び込んで、実際に本当か見てみよう、って話になったの。」

「え!行くの!?」

私がそう聞くと、そこにいたほとんどの女子が嬉しそうに頷いた。

「愛子も行こうよ!絶対楽しいって。」美優が言った。


そのあと、私は強引に説得させられ、無理やり行かされることになった。