そこにはいつも君がいた



私は手で顔をパタパタ扇ぎながら、階段を駆け下りた。

最近は、これが異常な頻度で起こる。毎回、彼が気付いてないことを祈るばかりだ。


いつしか、私は彼の安定した優しい声、温もり、私を見つめるときの眼差し、そしてあの輝くように明るい笑顔を求め、自分の身にそれを染み込ませたくなるようになっていた。

誰かをこんなに意識するのは初めてだ。

特に、私の好きなあの笑顔は授業中も私の頭から離れない。そして、ますます彼に会いたくなる。




彼には秘密がある。彼は私から隠すのを頑張っているみたいだけど、私はそれを見抜いている。それは大きくて、一人で抱え込むには重すぎるものなんだと思う。

たまに、彼は遠くを見つめ、思案に暮れる。そのときの彼の表情は、不安でいっぱいで、見ているこっちが辛くなる。


もしかしたら、これも彼が私を引きつける理由の一つなのかもしれない。どうしても、彼の曇った表情を晴らしてあげたい、そういう気持ちになる。



私は急いで教室に戻り、次の授業の用意をして、違う校舎の教室へと急いで向かった。


「あ、愛子、お帰り。」

「あかね。」私は息を切らして言った。

「どうしたの?顔赤いよ?」

私は笑って言った。


「うん、走ってきたからね。」