そこにはいつも君がいた



「ありがとうございましたー!」

私は元気な声でそう言うと、頭を下げた。

「愛子くん!」

後ろから私を呼ぶ声がした。

私は振り返った。「はい、店長。」


「そろそろ上がっていいよ。」彼は言った。

私は時計を見た。「わ!もう三時過ぎてる!ありがとうございます!」

そう言って、私は他の店員さんにレジの場所を譲ると、白猫のエプロンを脱いで、裏口から店を出た。そして、近くの幼稚園へと早足で向かった。



「あ!ママ~!」

そこに着くと、二つ結びをしている四歳の女の子が私の方に短い足幅で向かってきた。

私は早い呼吸で言った。「紅葉(もみじ)!ごめん、遅くなちゃって・・・・!」

「大丈夫だよ。見て、みーちゃんね、お花の折り紙作ったんだ。」

紅葉は、小さな手で私に折り紙のチューリップを見せた。

「お!良くできてんじゃん!」私は彼女の頭を撫でた。

「えへへ~。」そう言って、彼女は歯を見せて笑った。




白斗と過ごしたあの高校生活から、早くも十五年が経とうとしていた。白斗は優秀な成績のおかげで、高校二年をすっ飛ばして、私と一緒に三年生になることができ、結局一緒に高校を卒業した。その後は別々の大学に行ったが、出会ってから五年経った大学三年生の時に、彼が私に結婚を申し込んできて、二人で学生結婚をした。一年後には長男が生まれ、その五年後には長女の紅葉を出産した。私は働くと言ったんだが、白斗が私には家庭にいる母親であって欲しかったみたいで、話し合った結果、私は『キャッツ』で午前中だけ働くことになった。店長はそれを快く受け入れてくれて、今では子供二人とも大の仲良しだ。

白斗は大学卒業後、出版社に就職して、彼の明るさを活用した営業の仕事についた。結局両親の会社を継いだのは青太くんだったが、白斗は笑顔でそれを受け入れた。もともとデザインセンスの無い俺が継いでもしょうがない、と彼は言っていた。本当にそう思っていたのかは分からないが、今の仕事を楽しんでいるみたいなので、これで良かったと思っている。




家に帰って扉を開けると、青いランドセルが玄関の側に置きっ放しになっていた。

「しょーちゃん、遊びに行ってる?」隣で手を繋いでいた紅葉が言った。

「そうみたいだね。」私はため息を吐きながらランドセルを持ち上げて、家の中に入った。


長男の笑(しょう)は、育ち盛りの小学四年生だ。毎日のように、放課後は家にランドセルを置いてから公園で友達と遊びに行く、やんちゃだけど妹思いの男の子だ。

ちなみに笑の名前は、私が決めた。私はこれを笑が生まれる前から決めていて、白斗に意地を張ってこの名前をつけた。込めた意味は、『白斗みたいな素敵な笑顔の人になりますように』、だ。白斗にそれを教えた時は、『白斗みたいに』の部分は抜いたけど。