「ごめんね、急に呼び出して。」彼は言った。「でも、ここで言いたかったんだ。」
私の胸が締め付けられるように、苦しくなった。私は覚悟を決めた。
彼は、話を始めた。
「初めてここに来た時はさ、俺、すごく心細くて。これからどうしよう、どうやって生きていこう、とかしか考えていなかった。
不安でいっぱいの日が続いて、いつまでこんな生活をしなきゃいけないのかな、って思った。家出したのは自分なのにね、バカだよね。
でもある日、ある女の子が屋上にやってきたんだ。」
彼は目を閉じて、私たちに向かって吹いていた優しい風を身体で受けとめた。
「天使が降りてきたと思ったよ。正直、最初は仲良くなることに不安があったんだけど、しばらくしたら離れるほうが無理だった。
その子のおかげで、いつも付きまとっていた不安が嘘みたいに小さくなって、毎日が楽しくなった。そして、次の日が待ち遠しくなった。」
私の強張っていた肩から少しずつ、力が抜けた。
「その子は、気分で授業をさぼっちゃうような不良で、しりとりが異常に強くて、でも勉強が苦手で。」
私は彼の横顔を見つめ続けた。
「俺のことをいつも気にかけてくれて、心配症で、嘘がどうしてもつけなくて、意地っ張りで。」
目の奥に、じんとした感覚ができた。
「照れた顔がすごく可愛くて、強がりで、何事にも真っ直ぐと立ち向かおうとするけど、素直じゃなくて、泣き虫。」
彼は目を細く開けて、微笑んだ。
「どうしようもないくらいの、泣き虫で。でも、その全てが愛おしくて、俺は大好きなんだ。」

