そこにはいつも君がいた



彼は、扉に背を向け、床に座り込んで空を見上げていた。

その後ろ姿は、初めてこの屋上に来た時に見た、伸びた髪がなびく彼の後ろ姿と重なった。


彼は私に気づき、振り返った。そして、私に大きく笑いかけた。

私が恋に落ちたあの笑顔まで、あの日のと全く同じだ。見るだけで、足から力が抜ける。それも変わっていない。

彼を手放せる自信が、どんどん薄れてゆく。



「久しぶりだなぁ、ここ。」

彼は目を細めて言った。

隣に座った私は、そんな彼を次が無いように眺めた。だって、本当にそうなるかもしれないから。

「家を出た時からもう一年か・・・。早いな。」

春風が屋上に吹く。下のグラウンドにある木から風に乗って運ばれた桜の花びらが屋上で舞をする。

「愛子、花びらついてる。」彼は手を伸ばして、優しい手つきでいつの間にか私の頭に乗った花びらをとった。

もし彼はこれから私を振るつもりなら、彼は酷い人だ。そんな風に、花びらを指先に持って微笑まれたら、彼を手放せるわけが無い。