「いや、愛子強すぎるよ」
さっきまでしりとりをしていて、強烈な『ぬ』の字の攻め合いが行われた。
「そもそも『ヌガティーヌ』なんていう言葉を知ってること自体おかしいよ。」白斗は口をとがらせていった。
「だから言ったじゃん。しりとりは得意だって。」
彼は笑い、「そうだね。しりとりが得意な人が存在することを疑った俺が悪かったよ。俺はお手上げだ。」と言った。私は彼に向かってドヤ顔をした。
私は彼の腕時計を見て、時間を確かめた。
「あ、もうこんな時間。行かなきゃ。」
鐘はあと五分で鳴ってしまう。しかも次の授業は移動教室だから、急がなければならない。私は立ち上がって屋上を出ようとした時に、
「待って」
と、白斗に呼び止められた。
私は彼の方を振り返った。彼は私に近づき、私の頭に手を伸ばした。思わず私は目をつむった。
私の髪を何かがふわっと触れた。
「はい、オッケー。」
私が目を開けたら、彼の顔が目の前にあったものだから、びっくりして小さな悲鳴をあげた。彼はそれに笑った。
「髪が乱れてたから直したよ。こんなに綺麗な髪なのにボサボサなのはもったいないからね。」そう言って、彼は私をまっすぐ見て、微笑んだ。
その言葉と私を見つめる瞳に、私の顔は一気に熱くなった。

