そこにはいつも君がいた



白斗に出会ってから、ほぼ毎日、どっかの授業をさぼっては、彼に会いに行くようになっていた(特にお母さんと喧嘩した日は)。不思議なことに、彼はどの時間に行っても必ずあの屋上にいた。彼の出席日数が心配になる。

だけど、授業中にはいるくせに、放課後に行っても一回も彼に出くわすことはなかった。やっぱり、彼は謎だ。



私は、二段ずつ奥の校舎の階段を上った。彼のあの笑顔を見るのが待ちきれなかった。

最上階について、私は屋上への重い扉を押し開けた。


屋上には誰も見当たらなかった。

一瞬戸惑った。だって授業をさぼってここに来る時に、彼がいなかったことは今まで一度もなかったから。

だけど、横を見たら、ドアの隣に座り込んで昼寝をしている彼に気付いた。

私は白斗の前にしゃがみ込んで、彼の寝顔をじっと見つめた。


少し日に焼けた肌に、長い睫毛。そして、それにかかる長めの前髪。



彼を見つめてると、私の胸はざわざわし、落ち着かなくなる。でもそれが嫌な訳じゃない。

その胸騒ぎは、悪いことを忘れさせ、わたしを幸せでいっぱいにする。こんな気持ちは初めてだ。



しばらくしたら、あの長い睫毛が動き、彼の目があいた。

「あ、愛子。来てたんだ。起こしてくれればよかったのに。」

「いいの。白斗の寝顔を見てたから。」嘘ではない。正確に言えば、『見とれてた』だけど。

「そっか。でもやっぱり起こしてよ。せっかく愛子がいるのに寝てるなんてもったいない。」そう言って白斗はあの明るい笑顔を私に見せた。



彼の寝顔も好きだけど、やっぱり私はこの笑顔が一番好きだ。