そこにはいつも君がいた



お昼頃に、私の携帯が鳴った。あかねからの電話だ。

あかねが私に電話をかけてくることほど珍しいことは他にないかもしれない。そもそも、私に電話がかかってくることなんて、せいぜい母から月一、あるかないかぐらいだ。その他に、私の電話は滅多に鳴ったりしない(別に友達が少ないわけでもない。いつもあかねが一緒だから、わざわざ他の友達と連絡を取る必要を感じないだけだ。)。白斗も、家出をしたときに携帯は家に置いて出て行ったみたいだから、彼からかかってくることもない。

だから、部屋でくつろいでいるときに電話が鳴ったときは、本当にびっくりした。


「あかね?どうしたの?珍しいね。」

『どうしたの、じゃないよ。昨日!』

「へ?昨日?」

電話越しであかねがため息をつくのが聞こえた。『五時間目。急に教室出てったじゃん。』

「あー・・・はいはい。」しまった。昨日は、教室に帰った頃にはもうあかねはいなかったから、あかねには何も言っていなかった。それは、気になって電話をかけてくるのも無理はない。

『大変だったんだからね。授業が中止になって、学年の先生全員で探し回っていたよ。』

「うそ!」私を探す声は聞こえていたけど、まさかそんな大ごとになっていたとは・・・。

『うん。もうほんとに、心臓に悪いよ。最近、元気なかったと思ったら授業中にいきなり立ち上がって教室出てくんだもん。』

あかね、気付いていたんだ。私が白斗に会えなくて元気がなかったこと。

「あかね・・・ごめんね。」

『・・・なんで謝るの。』

「・・・言えないから、昨日のこと。約束したんだ。」

白斗に出会ったばかりの約束。彼は油断できない状況の中、私を信じて、毎日会うのを許してくれた。そんな白斗の信頼を裏切れない。

『・・・うん、そうだと思った。』

「ごめん。」

せめて、白斗が家族と仲直りをして、普通の高校生活を送れるようになるまでは、私には口を塞ぐ義務がある。

『分かった。気にしないで、じゃあね。』あかねは電話を切った。

ツー、ツー、という通話の切れる音は、耳に苦かった。




白斗は、『間違っていた。答えは家出じゃなかった。』と言っていた。おそらく、両親と素直に向き合うことにしたということだろう。

あかねにこれ以上、隠し事をしたいと思わない。

あかねのためにも、私は白斗の無事の帰りを待つのみだ。