「心くん優しいよね。困ってる人はすぐ助けるんだよ。」

「確かに、名前の通り心がある人だね。夏帆が好きになるのもわかるな~。あたしはタイプじゃないけど。」

夏帆は大きな目を更に大きくしてあたしを見上げた。

「な、なんでわかったの!!」

「二人の会話見てたらわかるよ~夏帆顔真っ赤だし!」

「そんな、、もう~海は~!」

照れてる夏帆がかわいくて仕方ない。

「1年の時から片思いなの。
デュエットも最近組むようになってね、、」

あれが片思いのはずない!と思ったけど
今は黙っていた。
二人が気づいた方がいいと思ったから。
夏帆は恋する乙女そのものだ。

「海、よければわたしが教えるよ。デュエットの相手は無理だけどね(笑)」

「夏帆ありがとう。でも実はこの歌知ってるの。」

「え?そうなの?じゃあなんでさっき歌わなかったの?」

「知らないふりすれば歌わないですむと思って(笑)」

「いけない子だな~!」

私が歌わない本当の意味を夏帆はまだ知らない。

恋の歌を歌いながら歩いていく夏帆の背中を
あたしは、親鳥がヒナの巣立ちを見守るような気持ちで見ていた。
そしてあたしも、ゆっくりと歩き出した。