「あ・・・、せ・・・、と・・・・・・。」





奥の方から何かがきこえる。




母さんが呼んでいるのか・・・?




その声はだんだんとはっきりしてきた。




「文瀬 湊!」




ああ・・・。誰かが俺の名前を呼んでいるのか。




「文瀬 湊!!きいてるのかっ!!」




突然そう怒鳴られた。



「は、はぃ!!」




反射的に応えるとそこには




自分と同じぐらいの年齢の女子がいた。




「えっと、どなたです――――」





「ねぇあなた、未来を変えてみない?」





俺は動揺を隠しきれなかった。

この人は何を言っているのだ?





「え・・・。それどういうことですか・・・。」




「だからぁ!未来を変えるの!
そのために素晴らしい能力を持って自分
の思うとおりにするんだよ!」




「素晴らしい能力・・・?」




「おー食いついてきたねぇ!
そう!人の気持ちが分かったり、人をコン
トロールだってすることができるんだか
ら!」




満面の笑みでこちらをみてくる。
そして、こう続けた。




「君ってクラスで浮いてるでしょ?」



「えっ・・・。」




「口ベタだし高校生活でも浮いたらどうし
よう!とか思ってるでしょ?」




嫌なほど当たっている。




「まぁ、そうですけど・・・。」



「じゃあ、この能力を手に入れて目指せ
高校デビュー!!」



高校デビューか・・・。確かにこんな学校生活はもうこりごりだ。今自分が志望している学校は俺しか受けない。
そうしたら高校であからさまに変わったことなどバレることはないのだ。



勉強はできないくせにこんな事になると
頭がさえる。




もし本当にそんな能力があるなら、俺の人生は変わるのだろうか。
毎日が楽しくなるのだろうか。




休み時間のたびに人に囲まれて楽しく話している俺。女子にも男子にも好かれ、信頼されている俺。つくらないでできる笑顔。




あぁ、そうなりたい・・・!
という気持ちがむくむくと湧き上がってくる。




「はぁ・・・。さっきから待ってるんだけど
・・・。もう能力いらない?なら帰るよ?」




しびれを切らし、こういい放った。



「ま、待って!!その能力ほしいです・・・。」





自分を変えたい。




「おっ!いいねぇ!分かった。いいんだね?」




「はい・・・。お願いします。」




「それじゃあ、目をつぶって。」




ゆっくりと目を閉じた。